ツンデレ社長の甘い求愛
詰め寄り、社長のスマホを奪い取った。

「っ馬場!?」


「すみません、大至急羽田空港まで来てください! それと社長の今日の予定はキャンセルしてください。緊急事態なんです!!」


『え、あの――っ』

一方的に伝え電話を切ると、すぐに社長にスマホを取り返されそうになったのを、間一髪で防いだ。

けれど鋭い視線を向けられてしまい、社長のスマホを両手でギュッと握りしめてしまう。


「馬場、どういうつもりだ」

怒りの籠った声に思わず肩をすくめてしまう。

けれどここで押し黙り、おずおずとスマホを返すわけにはいかない。

社長を仕事に行かせたくない……!


自分を奮い立たせ、戦略会議のときのように社長と対峙する。

「社長、仕事ではなく会長の元へ行ってください!」


「さっきの話を聞いていなかったのか? お前に非情と言われようと、俺は仕事に行く。それがじいさんのためでもあるんだ。わかったらさっさと返せ」


再び伸びてきた腕から逃れ、社長を見上げた。


余計なお世話かもしれない。

でも緊急事態なのに会長の容態を知らない社長を、みすみす見逃せないよ。

それに知っておかなければいけないのは、私なんかじゃない。――社長でしょ?
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