ツンデレ社長の甘い求愛
社長は会長に認めてもらいたいんじゃないかな。

話を聞いていて、そう感じてしまった。


違うのに。会長はもうとっくに社長のことを認めている。誰よりも社長の幸せを願っているのに。


「もっと素直になってください。社長の気持ちを、しっかり会長に伝えてください。……後悔だけはしないでください!」

「馬場……」


もしもう二度と会えなくなってしまったら……? そうなってしまったら、社長は後悔してしまうでしょ? そんな思いをしてほしくない。


「お願いします、仕事には行かず会長の元へ行ってください」


分かってほしくて繰り返し伝えてしまう。


ガヤガヤと騒がしい空港のロビー。

そんな中にいるというのに、私と社長だけ周囲から遮断されている錯覚を覚えてしまうほど、自分の胸の鼓動が耳に届く。


なにも言わない社長に不安が押し寄せてくる。


私の気持ちは、社長に届いてくれただろうか……?

心臓が速く脈打つ中、社長は静かに言い放った。

「馬場、携帯返してくれないか?」


「社長っ……!」

伝わらなかった? 私の気持ち。

咄嗟に顔を上げてしまうと、社長は力強い眼差しを私に向けたまま手を差し出していた。
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