ツンデレ社長の甘い求愛
「取引先の社長に自分の口から謝罪したいから、返してくれ」

「社長……それじゃあ……」

呆然と彼を見つめてしまうと、社長は目を細めた。


「行くに決まっているだろ? じいさんのところに。だから早く返してくれ」

グッと気持ちが込み上げてきてしまい、涙が溢れそうになってしまう。


よかった、よかったよ……!

唇を噛みしめて急いでスマホを社長に差し出した。


すると社長は受け取り、私を見据える。

「馬場の言う通り、後悔はしたくない。……ありがとうな」


伸びてきた腕が私の腰に回り、優しく引き寄せられた。

「――え、社ちょ……」


一瞬の出来事だった。

社長の顔が迷いなく近づいてきて、頬にキスが落とされた。


う、そ――。

離れた唇。

けれど彼の腕は私の腰に回されたまま。

騒がしいロビーで私にしか聞こえないよう、社長は私の耳元で擦れた声で囁いた。


「悪い、無性にお前にキスしたくなった」

「……っ!」

破壊力抜群な声と言葉に、口をパクパクさせてしまう。
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