ツンデレ社長の甘い求愛
胸がいっぱいになってしまい、深々と頭を下げた。


引かずにいてくれてありがとう。

おまけにみんな、カミングアウトまでしてくれて……。感謝してもしきれないよ。


「もー、かすみ先輩ってば顔を上げてください!」


「そうだよ、お礼言うこと自体おかしいでしょ? むしろお礼を言わないといけないのは俺の方だよ。いつも馬場さんには頼りっぱなしで、迷惑かけているだから」


松島先輩のフォローにみんな「確かに」「そうだな」「謝れ」といった言葉が飛び交った。


いつもの第一企画部だ。

いじられる松島先輩にみんな笑い声を上げる。


その様子を亜美ちゃんと肩を並べ、笑って眺めてしまっていた。


その後、部長の元へ総務部から「すぐに調査します」と報告があったらしい。

そしてこの日は、部長の心遣いで定時の十分前には特別に上がらせてもらった。


おかげでほとんどの人と会うことなく会社を後にすることができた。


帰り際、みんなに「お疲れ様です」と「明日、待っていますね」と言われてしまった。


第一企画部のみんながいてくれること、すごく心強く思う。


でもやっぱり社内を歩けば、今まで以上に突き刺さる視線を向けられ、陰口を叩かれるかと思うと気分は憂鬱になり、仕事に行きたくなくなってしまう。

それに――……、それになにより、自分の口から社長に伝えたかった。
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