ツンデレ社長の甘い求愛
真正面から見る同じ目線に胸がドキッと鳴ってしまう。


社長は私のすべてを見るように、瞬きもせず切れ長の瞳を大きく揺らしていた。

どれくらいの時間、見つめられていただろうか。

耐え切れなくなり、先に口を開いたのは私だった。


「あのっ……すみませんでした」

声が震えてしまう。

会ったら伝えたいことがたくさんあった。

なのに謝ることしかできない。


社長本人を目の前にしたら、頭の中が真っ白になってしまったよ。

それに――。
さっきの情景が頭をよぎる。


社長の物言いからして、あの写真を見たってことだよね? 隣に住む長日部さんが私だって知ったってことだよね?


それよりもみんなの前で言ってくれた社長の言葉は……? あれは本心? それとも私を庇うため?

なにも言わない社長の真意を知りたくて見つめ返すと、彼の手がそっと私の頬に触れた。


一瞬くすぐったさに瞼を閉じてしまうも、すぐに目を開ければ探るような目で私を見る彼と再び視線がかち合う。


「なぁ……、本当に馬場が長日部さん――なんだよな?」

やっぱり知られちゃったんだ。

そう、だよね。知られていないわけがないよね。


私の答えを待つ社長に覚悟を決め、大きく首を縦に振った。

「すみません、騙すつもりはなかったんです。最初は知らなくて、その……」

「もういい」
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