ツンデレ社長の甘い求愛
私の声を遮ると、社長は真正面から力いっぱい私の身体を抱きしめてきた。

一瞬にして包まれる彼のぬくもりに、クラクラしてしまう。


社長の大きな手が私の背中や頭を優しく撫でていく。

「悪いがすべて浅野から聞いた」

「え、浅野さんから……ですか?」


「あぁ。噂のことも社内メールのことも。だから慌てて切り上げて戻ってきたんだが、正解だった。……悪かったな、俺のせいであんな嫌な思いをさせてしまって」


ゆっくりと離されていく身体。

そして至近距離の社長は申し訳なさそうに眉尻を下げ、謝ってきた。


「そんなっ……!」

謝るのは社長じゃない。……私の方だ。

言葉に詰まり唇を噛みしめてしまった。


「色々聞きたいことがあるし、馬場も俺に聞きたいことがあると思う。……だが悪い、まずはお前の口から直接聞かせてくれないか? 馬場の気持ちを」

「え」


ドキッとしてしまう私に追い打ちをかけるように社長は続けた。


「さっき言っただろう? 浅野からすべて聞いたと。……俺と同じ気持ちでいてくれていると、自惚れていいのか?」


浅野さんからすべて聞いた? 自惚れていい?

単語を必死に頭の中で並べていく。


ちょっと待って。浅野さん、どこまで社長に話したの!?

でも――それを言われたら私も聞きたい。
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