ツンデレ社長の甘い求愛
今なら分かるよ。社長がどうして傲慢な態度を私達に取っていたのかを。



「その反動でますます私生活ではだらしなくなる一方だった。でもこのままじゃダメだと思って、家族が増えれば変わると安易に考えラブを飼い始めたんだ。……けれど慣れない世話にすぐに根を上げてシッターさんにお願いしてしまった。……でもさ、ラブはどんなに俺が遅い時間に帰宅しても、気づいて駆け寄ってきてくれたんだ。そんなラブと過ごしているうちに、今のままではダメだと思い、ここに引っ越してきた」



驚いた。社長は最初からラブちゃんを溺愛していたものだとばかり思っていたから。



「これまですべてお願いしていたラブの世話は、極力自分でやるようにしたよ。まぁ、出張中だけはどうしてもお願いしていたけどな。仕事にも慣れてきた頃だったし、少しずつ自分の時間も持てるようになったこともあって、心に余裕も持てるようになった。……そんなとき、お前と出会えたんだ」



すると頭上からは「クククッ」と声を押し殺すようにして笑う社長の声が聞こえてきた。



「それも俺と似たような恰好をしていて、ラブと同じラブラドールを飼っていて、溺愛していて? おまけに価値観や波長がピッタリな女ときたもんだ。惹かれない理由がないだろ?」


急に身体を離され「な?」と同意を求められると、顔が一気に熱くなっていく。

だってそんなこと聞かれても、反応に困るから。


堪らず視線を泳がしてしまうと、彼は話を続けた。
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