ツンデレ社長の甘い求愛
以前はラブの飼い主として、一緒に遊んでくれていたというのに、今では近づくこともできない。

「ほらカイくん。こっちの部屋でラブちゃんと遊んでいてね」


これでは埒があかないと判断したかすみが、二匹を別の部屋へ無理やり押し込んだ。

そして申し訳なさそうに、俺の元へと駆け寄ってきた。

「すみません、毎回カイくんが……」

「いや、それだけカイくんは、かすみのことが大好きなんだろう」


かすみがカイくんに愛情を注いでいたからこそ、俺は嫌われてしまったに違いない。

きっと俺にかすみを取られると思ったんだろう?


そんなカイくんが可愛らしいとは思うものの、このまま彼に嫌われたままでは切ないものがある。

愛犬家としては特に。

なにより悲しいのが、ラブはカイくんと違い、変わらずかすみに懐いているということ。


どんなに俺がかすみと仲良くしていても、ラブは気にする素振りを見せない。

むしろ「私も混ぜて」と言うように、突進してくるときたものだ。

考えに更けていると、なぜかかすみが俺をまじまじと見つめていることに気づいた。


「なに? どうかした?」

不思議に思い尋ねると、彼女は頬を赤く染め俯いてしまった。
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