ツンデレ社長の甘い求愛
口ではあんなこと言っておいて、誰より検査結果を気にしていたのは大喜さんだし、安心し喜んでいたのも大喜さんだった。

私と浅野さんはそれを知っているからこそ、口元が緩んでしまったのだ。


「かすみさん、仕事のこともあるじゃろうが、しっかりサポートするように言い聞かせるし、生まれた後も安心して働いていいんじゃぞ? 保育所が見つからなかったら、私が面倒を見てもよいし」

「えっと……」

大喜さんに言ってもだめだと判断したのか、ひ孫の催促の矛先が私に向いた。


本音をいえば、もう少し仕事を頑張りたいし、なにより大喜さんとの時間を大切にしたい。……でもここまで期待されて、妊娠出産後のことまで気遣ってくれるのなら、色々と考えてしまう。


返答に困っていると、すかさず大喜さんが助け舟を出してくれた。


「じいさん、こればかりは授かりものだろ? あまりかすみにプレッシャー与えるようなこと言わないでくれ。……それに俺はもう少しかすみとの時間を、大切にしたいと思っているから」

大喜さん……。

同じことを考えてくれていたのかと思うと、嬉しくてジンときてしまった。
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