ツンデレ社長の甘い求愛
「どうした、答えられないのか」とさらに追い詰める社長に、開発部の人はひたすら書類を捲り、隣に座る主任に関しては、ひたすら視線を落とすばかり。


このままでは「最初からやり直せ!」なんて言われてしまいそうだ。

小さく深呼吸をし、「社長、よろしいでしょうか」と挙手をした。

すると途端に鋭い視線が向けられる。


「馬場には聞いていない」

そして「お前は口を開くな」と言いたそうに威圧感を与えてくる。

普通の社員だったらここで押し黙ってしまうところかもしれないけれど、生憎私は違う。

このままじゃ本題に入れないし、打ち合わせが長引いてしまいそうだ。

向こうもこっちもこの後も予定が入っているんだから。


「聞かれていなくても、私もこの企画に携わっているひとりですので、発言する権利はあるかと思いますが?」

「ひっ! ばっ、馬場さん!?」

さっきまでひたすら下を向いていた主任が、すっとんだ声を上げ止めに入られるも、ここで引き下がるわけにはいかない。

主任の制止を振り払い、真っ直ぐ目の前に座る社長を見据えた。
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