ツンデレ社長の甘い求愛
「なんなんでしょう、拍子抜けしちゃいましたね」

あっさりと引き下がった社長が出ていったドアを見つめたまま呟いた途端、主任が立ち上がり抗議してきた。


「もー馬場さんさぁ!! お願いだから寿命が縮むような言動は慎んでもらえないかな!? 本気で心臓が止まるかと思ったよ」

「そんなオーバーな……」

「オーバーじゃないよ! びっくりしたよもう」


余程私の行動が予想外だったのか、珍しく声を荒げた後、主任はまた椅子に腰かけた。

「でも俺は助かったよ。どうも社長に睨まれちゃうと萎縮しちゃって、なにも言えなくなるんだ。だからありがとう」

「いいえ、そんな」


「ありがとう」と言われると、自然と口元も緩んでしまう。

けれどそれを見た主任はすかさず口を挟んできた。


「社長がたまたま用事があったからうまく収まっただけだからね。戦略会議とは違うんだ、馬場さんも少しは危機感もって仕事しないと、いつか社長の逆鱗に触れて、どこか違う部署に飛ばされても知らないからね」


本当にどこまでもオーバーで小心者な主任で困る。
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