ツンデレ社長の甘い求愛
けれどそう思っているのは主任だけではないようで、開発部の人も同調するように頷いた。

「それはあり得るかもね、なんせあの社長だし」

「ですよね! 馬場さんは社長の恐ろしさを甘く見ていますし、少し危機感が足りないんですよ」

共感し合うふたりだけれど、私は一緒になって頷けそうになかった。


確かに社長は傲慢なお方だし、恐ろしい人だとも思う。

けれど、な。
突っかかったからとか、気に食わないからとか、そういった理由で人事を決めてしまうような人ではないと思う。


もちろんあんな人大嫌いだけど! ……でもやっぱり仕事に対する取組みだけは、尊敬できる部分の方が多いんだよね。


その後はまるで社長がいた時間が嘘のように、終始穏やかに打ち合わせが進んでいった。



「お先に失礼します」

「おつかれさまでした」

定時を三十分過ぎて、オフィスを後にする。

本当はまだ仕事が少し残っているけれど、あとは家でもできそうな雑務だけ。


正直、朝から打ち合わせに社長が乱入してきたり、その後の打ち合わせもなにかと長引いたりして、一週間のはじまりだというのに身体は悲鳴を上げていた。
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