ツンデレ社長の甘い求愛
有無を言わせないと言うように、あっという間に私の横を通り過ぎて下りていく。

あぁ、やっぱりこの人は傲慢なお方だ。

私の意思など一切無視なのだから。


もちろん社長と話すことなんてなにひとつないし、就業時間が過ぎた今、話したくもない。

けれど社長様に逆らえないのが一般社員の悲しい性……。

言われるがまま後ついていくしかなかった。


一歩後ろの距離をキープしながらついていく。

「今朝の打ち合わせのことだが、お前の言動はすべて間違いだぞ」

「……はい?」


時間がないのかいきなり本題を切り出されたものの、主語のないご指摘に首を傾げてしまう。

けれどそれが社長は面白くなかったようで、小さく舌打ちした。

え、ちょっと! 今舌打ちしましたよね!?

聞こえないようにしたつもりかもしれませんが、こんなに音が響く非常階段ではしっかり私の耳に届きましたけど!!


社長じゃなくてむしろ私が舌打ちしたいくらいだ。
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