ツンデレ社長の甘い求愛
社長が何に対して言っているのか分からない。

けれどこれだけは理解できる。……私、ガッカリされているって。

入社してから、それなりに仕事は頑張ってきたつもりだ。
努力もしてきた。


社長には気に入られていないかもしれないけれど、仕事に関してだけは、会議を通して理解してくれているとばかり思っていたのに……。


言葉が出てこない。
なにに対して言われているのか分からないのでは、謝罪することも意見することもできないのだから。


途方に暮れてしまう中、私が思っていることを察したのか社長は深く長い息を吐いた。


「身に覚えがないってところか。まぁ、そうだろうな。知っていたら打ち合わせのときのような言動は出ないはずだ。……そんな馬場に教えてやる」


そう言うと社長は一段階段を上り、私との目線を合わせた。

初めて真正面から重なり合う視線に、心臓が飛び跳ねたのも束の間、社長は躊躇することなく言い放った。


「馬場はあのとき、開発部の社員を助けたつもりでいるかもしれないが、とんだ自惚れだ。むしろお前、あのときあいつが成長できるはずだった機会を奪ったんだぞ」

思いがけない話に目をパチクリさせてしまう。

「どういうこと、でしょうか?」

言われてもいまいちピンとこない。

すると社長は先ほどより深い溜息を漏らした。
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