ツンデレ社長の甘い求愛
次から次へと出てくる山本さんに対する偏見にギョッとしてしまう。

「ちっ、違いますよ! あの人は山本さんといって私が住むマンションの隣に先週引っ越されてきたばかりの方なんです」

慌てて弁解すると、皆さん拍子抜けした顔を見せた。


「そうなんですか? カイくんママの隣に?」

「あら、じゃあ怪しい人ではないのかしら。カイくんママのマンションの隣に越してきた方なら」

ここの公園を散歩コースにしている人たちは、みんなご近所さんが多い。

ペットOKのマンションは数が限られているし、それぞれどこに住んでいるのか知っている。


「全然怪しい人ではないですよ! ただその……見た目はアレですけど」

そこに関しては言葉を濁してしまう。

私も人のことを言えないけれど、さすがに散歩となると髪を整えたりと必要最低限の身だしなみは気をつけているつもりだ。

けれど山本さんは違う。

先週と同じくボサボサの髪と相変わらずの猫背。おまけにヨレヨレのジャージ……。

うん、これでは不審者に思われても仕方ない気がする。

それに挨拶しても無視したんでしょ? どうしてそんなことしたのだろうか。

私には引っ越してきたとき、きちんと挨拶をしてくれたのに。
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