ツンデレ社長の甘い求愛
「でも分からないわよ、見た目のまんまって人が多いしね。カイくんママも同じマンションで隣なら尚更気を付けてくださいね」

「そうですよ! いかにもって人が犯罪を犯すものなんですから!」

口々に注意を促され、ひたすら苦笑いを浮かべるばかり。


「ありがとうございます、えっと……それじゃまた」

このままここに留まっていたら、延々と話に付き合わされてしまいそうだ。

小さく会釈をしリードを持つ手を緩めると、チャンスとばかりにカイくんが走り出した。

それを言い訳にそそくさとこの場を後にした。


「ふー、危ない危ない」

犬友達の皆さんとは、顔見知りってだけの関係であり、お互いの名前を知らない。

さっき呼ばれていたように飼っている子の名前で呼び合っているのだ。

年齢も性別もさまざまで、あのグループは主に小型犬仲間。

近辺で大型犬を飼っている人は少なく、ラブラドールを飼っているのは今のところ山本さんしか知らない。

最初は分からないことばかりでよく話を聞いてアドバイスをもらっているうちに、次第に仲良くなっていった。

もちろん皆さん悪い人ではない。……けれど、どうも噂好きというか、ちょっと過剰に反応してしまうところがあるというか……。

時々、自分とはソリが合わないのではないか、と思うことがある。
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