ツンデレ社長の甘い求愛
「助かったよ、カイくん。どうもありがとうね」

必死に先を急ぐカイくんにお礼を言っても、カイくんはただこちらを見ただけ。

無自覚ながら私のピンチを救ってくれちゃうなんて、さすがはカイくんだ。

とことん自分はカイくんが好き過ぎると再認識していると、当の溺愛相手であるカイくんは、遊びたい一心でひたすら真っ直ぐラブちゃんの元へと向かっていく。


あぁ、やっぱりそうなりますよね。
ずっとカイくんの視線はラブちゃんに釘づけだったし。


山本さんと会うのは一週間ぶり。

最高に癒された相手と会うとなると、ちょっと緊張してしまうけれど、きっとまだ犬友達の皆さんは、彼を警戒して見ているはず。

ここで私が仲良くしているのを見たら、見方が変わるかもしれない。

それに――。

色々あった五日間。彼が放つ癒しオーラを浴びたい。

せめて週末くらいは、社長のことを忘れたい。

その一心でカイくんにリードされるがまま、ラブちゃんと遊ぶ山本さんの元へと歩み寄っていった。

「おはようございます」

声を掛けると、真っ先に気づいたのはラブちゃんだった。

「あっ、おはようございま……わっ! こらラブ!」
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