ツンデレ社長の甘い求愛
わずかに見える眼鏡の奥に細めた目――。

ううん、違う。そうじゃない。
私はそんな人間じゃない。

誉めてくれた山本さんには悪いけれど、「ありがとうございます」なんて言えないよ。

だって実際の私は違うから。

山本さんに誉めてもらえるような人間じゃない。

常に自分の考えが正しいと思ってきた。
自分が動くことが周囲のためだと――。


思い返せば交友関係でもそうだった。

みんなでどこかに出掛けようかとなったら、率先して指揮を取ってきた。

相談されたら、自分の考えを伝えて励ましてきた。

念頭には“みんなのため”それがあったはずなのに、今思えば自分勝手な言動ばかりだったかもしれない。


出掛ける先もリサーチして提案していたけれど、自分が行きたいところばかりだったし、相談してきた友達の気持ちを考えての助言のつもりだったけれど、友達はただ私に話を聞いてほしかっただけなのかもしれない。

背中を押して欲しかっただけなのかもしれない。
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