ツンデレ社長の甘い求愛
思い当たる節がいくつもある。

さっきだって社長の助言がなかったら、間違いなく聞いてしまっていたもの。

「あぁ、こらラブ、カイくん! あまり遠くへ行ってはだめじゃないか」

目を離した隙に走り出した二匹の後を追った彼にハッと我に返り、私も後を追い掛けしっかりカイくんのリードを掴んだ。

「まったく、ラブは」

口ではそんなことを言っているくせに、山本さんはしゃがみ込み愛しそうにラブちゃんの頭を撫でている。

少しだけ上がる口角。
そのまま私もしゃがみ込み、カイくんの頭を撫でた。


別に山本さんとはただのお隣さんってだけの関係。
しかも私、彼に「長日部さん」って呼ばれちゃっているし。

カイくんとラブちゃんが仲良しだから、こうして一緒に公園で過ごしているだけに過ぎない。

それなのに……な。
どうしてだろうか、どうしても彼に聞いて欲しかった。

「あの……」

「はい?」
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