ツンデレ社長の甘い求愛
架空の人物のことなんて考えていたはずがない。当然苦しい言い訳ながらも、私に彼氏がいると信じて疑わない亜美ちゃんは、途端に目を輝かせた。

「やっぱりそうだったんですね! もー、かすみ先輩ってばどれだけ彼氏さんのことが好きなんですか!?」

「あっ、あはは……」

バシバシ背中を叩かれながら、もう笑うしかない。

今まで架空の彼氏の存在に対して罪悪感なんて抱いたことはないけれど、今はちょっぴり抱いてしまっている。


自分で話したことはないのに、いつの間にか過大になっていき、私の彼氏はとんでもなくハイスペック男子と化している。

けれど私がいいなって思っている人は、まったく違う人。

いや、山本さんがダメと言っているわけじゃない。

むしろ山本さんはあれがベストだと思うし!!

もし……もしもだよ?
この先、この曖昧な感情が確かなものと変化していって、彼と気持ちが通じ合える日が訪れたら?

みんなが噂している彼氏とはちょっと……いや、かなりかけ離れていることになる。

「嘘つき」呼ばわりされても、文句を言えない。

いやいやいや! そもそも山本さんと付き合うこと前提で考えていること自体がおかしい!
< 89 / 347 >

この作品をシェア

pagetop