零 ―全ての終わりと始まり―
「これに書いてあったことは、“君臨者”の本当の意味についてだ。
ファロル、“君臨者”の意味言ってみろ」

「え?確か・・・何かすごい力を持ってて、ものすごい長生きする・・・だったような・・・」

曖昧に言葉を濁すファロルにレクトは苦笑し、「まぁ大体そんな感じだ」と頷く。

「正しく言うと、半永久的の永い時を過ごし、“君臨者”だけの不思議な能力を持つ種族・・・。
俺達に伝えられているのはこの二つだけだが、もう一つ、本当の意味があったんだ」

レクトは風になびく自分の長い髪を押さえながら、レクトに説明を始める。

「元々・・・“君臨者”は人間だったんだ。
ある時、更なる力を得ようとした人間が人体実験を行い、そして“君臨者”が誕生した・・・」

ファロルは言葉に眉を寄せたが、言い返そうとはせずに、ただ耳を傾けている。

「その結果、さっき教えた二つの力・・・そしてもう一つ、“君臨者”は能力を得た」

ファロルは言いにくそうに口ごもったが、しかしやがて再び口を開くと、視線を書物からファロルの右手・・・否、十字架に定めた。

「それは、一般的に呪いと呼ばれるモノに近い。
強大すぎる能力を制御するために、その十字架はあるんだが・・・
・・・その十字架は、徐々に人の理性を蝕んでいくらしい」

ツー、とレクトがなぞった書物の挿絵を覗き込み、ファロルは頷いた。
その挿絵に描かれていたもの・・・それは確かに、ファロルの右手に宿る十字架と同じ形をしていた。

「ふぅん?・・・で??」

「で?っていうか・・・それが原因であの大戦争は起きたらしいけど・・・」

「ふぅん・・・で?」

「だから・・・っていうか『で?』って言うなよ!
緊張感の無い奴だな・・・」

ぶつぶつ文句を言いながら、しかし再び説明を始めるレクト。

「俺が言いたいのは・・・お前がその十字架を持つことによって、いつか正気が失われるってことだよ」

心配そうに言ったレクトに、ファロルは髪を掻き上げながら笑みを浮かべて見せた。
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