零 ―全ての終わりと始まり―
「だから、俺のこの十字架を外せって?
それは無理だな、レクト」

にっこりと微笑みながらそう返したファロルに、レクトは大きな溜め息を吐く。

「・・・言うと思ったよ、ファロルなら」

呆れたように呟いたレクトに、ファロルは「ところで」と問いかける。

「俺の役に立ちそうな記述、何か無かったか?」

「ああ、調べてやったよ。
だが・・・残念ながらそれらしい記述は無かった」

そうか、と呟き、ファロルは空を仰いだ。

「・・・訊いてる、わけないか」

―――何がですか?

「うぉわッ!!!?」

まさか答えるとは思ってなかったらしい・・・
ファロルは驚いて声を上げたが、声の主・・・セリルはくすくすと笑った。

―――ごめんなさい、驚かせてしまいましたね。

「あ、ああ・・・」

ファロルが答えるすぐ側で、レクトが訝しげに眉を寄せる。

「ファロル、誰と話してるんだ?」

「・・・?聞こえないのか?」

―――えぇ、私の声は、貴方以外には聞こえないわ。

答えたセリルの声に頷きながら、ファロルはちらりとレクトに視線を向けた。
未だ訝しげに眉を寄せるレクトに、「悪い」と言ってからファロルは首を傾げた。

「さっきの、聞いてたか?」

―――はい。

「・・・“君臨者”の話は本当なのか?」

―――はい・・・。

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