零 ―全ての終わりと始まり―
「・・・別に俺はそれでも構わないけどな」

―――・・・ありがとう・・・。

はにかむように微笑み、ファロルは頷いた。
・・・しかし。

―――・・・気を付けて・・・!誰かが来てる!

セリルの言葉に表情を一転させ、鋭い目で部屋の扉を睨んだ。
・・・そして、彼女の言葉が正しかったことが証明される。


・・・バタンッ!!


「よお、ルティオン」


中に雪崩れ込むように入ってきた軍隊・・・更にその一番前にいる赤髪の青年に、ファロルはそう声を掛けた。
長身で細い体つきをしているが、しかし身体には頑丈な鎧を装着していて、腰のベルトには二振りの剣が差してある。
青年・・・否、ルティオンはどこか悲しそうに眉を潜め、軽く頭を下げた。

「・・・ファロル様、旦那様の命令で捕らえに参りました」

「ふぅん?随分行動が早いじゃねえか、父上も。
・・・ルティオン、断ると言ったら?」

「・・・無理矢理にでも、捕らえさせて頂きます」

ベルトから剣を引き抜き、彼が構えるのを確認すると、ファロルは口元に笑みを浮かべた。

「いいぜ?来いよ。お前らの狙いは俺一人のはずだ」

「・・・いえ、レクト様も捕らえよとのご命令で御座います」

レクトはそれを聞くと大きな溜め息をつき、書物を懐に収めて、ファロルの隣へ歩いていった。

「おいおい、俺もかよ。
勘弁してくれよファロル」

しかし彼の口元にも笑みが浮かんでいることに気付いたルティオンは、後ろにいる兵士にちらりと合図を送り、剣を低く構えた。

「・・・参ります!」

その言葉を口火に・・・兵士はファロルとレクトに襲い掛かってきた。
ファロルは近くにいた兵士の首に手套を入れ、気絶させるとその剣を奪って振るった。
レクトは宙に指で文字のようなものを描き、にこりと微笑んだ。

「悪いが、勘弁してくれよっ!」

彼の指先から炎の球弾が飛び、兵士を襲う。
火傷こそするものの、死ぬほどの怪我は負わないはずだ。

「手加減はしたからな!・・・ファロル、俺は先に行くぞ!」

「ああ、俺もすぐに行く!」

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