零 ―全ての終わりと始まり―
扉から逃げ出したレクトに気づき、ルティオンは思わずその方向を向いた。

「逃がすな!捕らえろ!」

「・・・余所見してる場合じゃないぜ?ルティオン」

ファロルの剣が間近に迫ってくるのを見て、ルティオンは「チッ」と舌を打った。
彼は持っていた二振りの剣を盾のようにし、ファロルの剣を防いだ。しかし・・・

「甘いなっ!!」

突如降ってきた声にルティオンが上を振り向くと、そこにはいつの間に移動したのかファロルがいて、剣を大きく振りかぶりながらルティオンに迫っていた。
防御は、間に合わない。

「ぐあッ!!」

攻撃の衝撃に耐え切れず、ルティオンは床に転がった。
頑丈なはずの剣が真っ二つに折れ、それを拾う前にファロルが遠くへ蹴飛ばした。
他の兵士を倒しながら、ファロルはしかし、ほとんど傷を負っていない。

思い知った。
これが、実力の差なのだと。

「・・・しかし、まだ負けたわけでは無い!」

ルティオンが声を張り上げ、床に転がったまま、人の言葉とは違う不可思議な言葉を紡ぎ出した。
それに気付いたファロルは一気に辺りにいた兵士を薙ぎ倒すように斬りつける。
―――魔術の詠唱!
しかし、ファロルの行動よりも若干、ルティオンの詠唱が終了する方が早かった。

「躍れ、炎よ!」

直後、彼の指先から、先ほどレクトが使った魔術と同じ炎の球弾が飛び、ファロルを襲った。
術後、致命傷にはなり得なかったものの、彼は右目を押さえていた。
血が地面に滴り落ちる。が、しかし。
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