零 ―全ての終わりと始まり―
「甘いって言ってるだろ!」

魔術が彼に傷を負わせた。
それがルティオンに油断を与えてしまった。
ファロルが剣を下段に構え、そのまま、ルティオンの元へ駆ける!

「ッ・・・!!」

「今さら遅ぇよ!!」

咄嗟に防御に入ろうとしたルティオンのアームガードを足で止め、がら空きになった彼の胸を・・・しかし、心臓とは別の場所を深く斬る。

「うあぁぁぁああッ!!」

彼の鎧を深く切り裂いた剣を見つめるファロル。
いくらなんでも、幾度も兵士を斬ったその状態で彼の頑丈な鎧を斬るのは無理があったらしい。
すっかり使い物にならなくなってしまった剣を、投げ捨てるファロル。

「まあいいか・・・。どうせ全員片付いたしな」

ファロルが呟いた言葉に、ルティオンは視線だけを泳がせて周囲を見回した。
血に濡れた部屋には、そこら中に兵士がいたが、全員その血溜まりに沈んでいる。

「俺の勝ちだな、ルティオン」

フッ、と口元に笑みを浮かべるルティオン。

「えぇ・・・そうですね・・・。貴方が強いのは承知の上でしたが・・・
まさか・・・ここまでとは」

「ハッ。やめろよルティオン。その俺に剣術を教えてくれたのは、他でもないお前だろ」

「・・・えぇ・・・そうでしたね・・・」

ぐぶ、と血を吐いたルティオンに、ファロルは目を伏せる。

「・・・ルティオン、俺はアンタを本当の兄さんのように慕ってた」

「ふふっ・・・もったいないお言葉です・・・」

「アンタのようになりたいと思ったこともある。いや・・・今も思ってる。
・・・アンタだけは、俺を本気で見てくれていたから」

薄れていく意識の中、ルティオンはファロルの声を聞いた。





「だから、俺はアンタには止めを刺せない」









―――ファロル様・・・

どうかご無事で。
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