零 ―全ての終わりと始まり―
―――酷、でしたね。

「・・・セリル、か?」

―――ええ。ずっと見ていました。

「そうか・・・」

自嘲的に微笑み、ファロルは怪我した右目を抑えた。
出血こそ止まったものの、まだ痛みは残っている。

―――傷を癒します。・・・癒しの力よ、放て。

彼女の短い詠唱と共に、目だけでなく身体全体の傷が癒えていくのを感じた。

―――辛いですか?

「辛い?俺が?」

―――はい。私のせいで、こんな目に遭わせてしまい・・・

「・・・バカ」

―――バッ・・・!!

声しか聞こえてこないが、多分この声は驚いている。
否・・・怒っているかもしれない。

「俺にしか出来ねぇことなんだろ?だったら別にお前を責めたりしない」

―――ですが・・・

「バカ。辛くなんかない」

その時見せたファロルの切ない、悲しげな横顔を・・・
セリルはきっと忘れることは出来ないだろう。

―――ファロル・・・さん

「・・・知ってたんだ?俺の名前」

―――はい・・・

「もういいぜ?俺は気にしてない。
それよりももう行こう。レクトが心配だ」

―――はい、そうですね・・・






彼らの歩む道は、
果てなく
辛いものだった―――――
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