さくらの空
一曲弾き終わり軽く頭を下げると

「先輩、今見とれてたでしょ?」

いつのまにかいつもの千秋に戻り、悪戯な視線を送ってきた。


「べ、別にそんな事ないぞ?こんな特技を持っているなんてと感心してただけで・・・」

ていうか、なんでこんなにどぎまぎしてるんだ俺?

「まぁ、いいですけど。褒められたということにしといてあげます。で、何の曲か分かりました?」


あー何て言ったっけな。聴いたことはあるんだが曲名がでてこない。

「・・・ほらよく小学校の掃除の時間とかにかかってるやつだろ?」

「確かにそうかも知れませんが。このくらいの曲もわからないのはダメですよー」

「う、うるさいっ。それよりずいぶん大切にしてるんだな。久しぶりという割には音も狂ってないし,ちゃんと手入れされてるみたいだし。」

「一応私の宝物ですからね。いろいろな想い出が詰まってるんです。」

いとおしそうにバイオリンを抱えたままそう答えた。

「なんか弾いたら疲れちゃいました。私は寝ますんでそろそろ帰ってもらえます?」

・・・分かっているつもりだが、またなんと自分勝手な。

「はいはい、分かったから。じゃあ大人しく寝てろよ。」

「了解です。あ、言い忘れてましたけどありがとうございました。お粥おいしかったです。」

お粥じゃなくて雑炊なんだが、まぁいいか。


「んじゃお大事に。」
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