好きになるまで待ってなんていられない


お互いコーヒーを飲んだ。

「俺は昼休憩の時間だから、自分の一服に合わせるように外に出た」

そして、下りて来たのは私だった、って事よね。…それが?
正体が解ってなんだというの?

「待ってたように見えちゃダサイから、煙草に火をつけ、ある程度吸いながらだ」

うん。いつも階段の途中から煙草の匂いがし始めていた。

「それで…間の悪い挨拶をするようになった」

あー、やっぱりそっちも気まずいって思ってたんだ。私だって、ほぼ毎日、挨拶をするのは気まずいんだから。

「嫌だろ?」

「え?」

「あんたさ、階段下りきったところで、顔が曇る、若干ね。あ、また居る、会ってしまった、みたいな感じ?」

…間違いございません。やっぱり体の動きも急に不自然だから解るよね。

「帰って来た時もだ。足こそ止めないけど、後戻り出来るなら、もう一度、帰るタイミングをやり直したい、みたいな」

もう、最、悪…。ばれてる。感じ悪い女だよ。

「仕方ないよな。最近まではそんな事、気にしないで出掛けられてたんだから。隣に整体院が出来たばっかりに。って言うか、俺が煙草吸ってるところに出くわすから。毎度毎度、気を遣わなくちゃいけなくなった」

…一言一句、違わないくらいの事です。その通り。昔は良かった…。

「…キヨさん…、て言うんだ。俺に釘を刺してくれたうちの…受付の女の人。
釘を刺すって言っても、後になったけどな。
こういうところの受付って、若い女性じゃない方がいいんだ。色々、あるから」

「は、あ」

内状を聞かされても…。
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