好きになるまで待ってなんていられない
ピンポン。
ピンポン。
…ん゙、誰だ。…間違いだろ。
ピンポン。
…あ゙ー、何だ、誰だ。本当にうちに用か?
ピンポン。
「はい、はい、誰で、す…か、成美…」
「社長…」
「どうした…まだ朝の…8時だぞ、…晩飯の時間と間違えたにしては、…そんな訳無いよな。
…とにかく入るか」
「…はい」
社長、跳ねた髪のままで珈琲を入れてくれた。
「そのまま、来たのか…」
慶而君が一緒だってメールしたから…。あ、服も変わって無いか。
「…はい」
「怖くなったんだろ」
…もうばれてる。
「……はい」
…。
「はぁぁ。まあ、仕方ないよな?
好きになって意思を通したんだから」
「…はい。私と居てはいけない。私は好きだと言ってはいけなかった。
もっと大人でいないといけなかったんです」
…。はぁ。
「そんな気持ちになるのは解っていた事だ。
話はして来なかったのか?
このまま逃げる訳にはいかないぞ?」
「はい」
「黙って出て来たのか」
「はい」
…疲れたのだろう。よく眠っていた。
珍しく私が動いても目を覚まさなかった。
「今頃、訳が解らなくて捜してるだろ。まさか黙って居なくなってるなんて思わない。…パニックだ。
部屋に帰ってるのかと、行ってるかも知れないぞ?
何なら暫くここに居ろ。
必要な物は買い揃えたらいい事だ。
あの男には俺が会う。
話は俺がする。
一度は会わないといけないんだから」
でも、私は私のこの気持ち、伝えないといけない。
「成美は部屋に帰ったら、仕事に出て来れなくなるだろ?
こうなった時、隣が職場なんてな…苦しいだろ。
自分でコントロール出来るなら別に構わんが。
ここに居ようと帰ろうと好きにしたらいい。
ともかく…でかいけど適当に服を貸してやるから。
……風呂に入れ」
…。