好きになるまで待ってなんていられない


「違う、そうじゃない」

慌てて身を起こして上から見た。胸に抱き込められた。

「解ってる…言いたいニュアンスは解るよ」

頭に口づけられた。

「一般的に、よく男が、一生幸せにします、なんてプロポーズで言ったりするけど、…よくそんな一生なんて無責任な事が言えるなって俺は思うよ。

未来の事なんて誰にも解らない、だろ?
明日だって、どんな災難に遭うか解らない。それは災害かも知れない、交通事故かも知れない。
そしたら突然居なくなるかも知れないんだ。
幸せにするどころか、守る事すら出来なくなってしまう。

幸せって自分が感じるもんだろ?
そりゃあ、幸せに繋がる、出来る事はするよ、不幸になって欲しくないから。

それでも決まり文句のように言うのは、何でもいい、確約が欲しいからだ。

誰もが安心したいからだよ。

それと比べたら、俺達には何も無い。
確約も安心もだ。
好きだという事しかない。

だけど恋するってそういう事だろ?

凄く会いたいと思う。
一緒に居たいと思う。
離れたくないし、離したくないと思う。
どんどん愛しくて堪らなくなる。

俺達は恋をしている。
今はそれだけだ。

恋の真っ最中だ。

だから、今、終わりにしようなんてならない。

この感情は安心には繋がらないモノだ」

だから、一緒に居るのに、ふと不安に襲われる。
…先に別れがあると思うからだ。

一人一人、自立した大人でいれば何も変わらない気がする。

好きになることで相手に依存しなければ…寄り掛かり過ぎなけれは大丈夫な気がする。


安心を求めたいから結婚なのか?
好きが薄れて嫌いになっても一生一緒に居ると誓う契約…。
よほどの事が無い限り別れたりしない。

俺はやっぱり冷たい男なのかな。

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