好きになるまで待ってなんていられない
「薄れなければ好きに終わりは来ないって事だ」
確かに、理屈はそうだと思う。
…恋の寿命は短いって言う。
それは燃えるように恋をするから。
では好きになればなるほど、好きが濃いと、燃焼時間は短くなるのだろうか。
…。
やっぱりこんな話…、早まった事はしてはいけなかったんだ。
どうしたらいいのか、…どうなるのか、自分が不安になったばっかりに…口にしてしまった。
こんな話をした上で好きだとか…この人は無いような気がする。
そう…一気に冷めていくのかも知れない。
私がそうさせてしまった…。
薄れると自覚するよりも、終わりは早くなってしまうのかも知れない…。
あぁ…そうなっても仕方のない事だ。
好きと、好きでいようとする事は全然違うから。
「灯…」
ぁ…。ん、ん。
「慶而君?…ぁ…慶而、君?」
どうしたの?急に…。
「好きが終わったら…次は、新しい別の気持ちが始まると俺は思ってるよ…」
え?
「好きが終わったからって、…終わらないって事だ。
そうやって続いていくモノだと思う」
ん、…ん。慶而君…。
「だから、今は…、好きだ」
こう言えば灯は少しは安心出来るのか。
あ…何だろうこれって…。何か囚われていたモノがすーっと無くなったような、ガチガチで居なくていいっていうか…そんな気持ちになれた。
「慶而君…」
「…柔らかい顔つきになったな。
灯は根っから真面目なんだよ。きっちりしようとし過ぎだ。
俺の事を気に掛け過ぎている。
まるで価値が低いみたいに自分を粗末に思っちゃいけない。
そういう意味でも気にし過ぎだ」
あ、…。慶而君…。ん…。
「また話を戻すような事を言うけど、誰のどんな恋だって、遅かれ早かれ、いつかは終わる。
だけど、恋の…終わり方、終わらせ方はそれぞれ違うって事だ。
灯…俺、さっきからヤラシイ下心の方が勝って来て、こんな話をしてるのに…、もう限界なんだけど…そんな動機でしてもいい?」
「聞かないでくれる?
…今日は私から誘ったのよ?いいに決まってる」