好きになるまで待ってなんていられない


カンカンカンカン…コンコンコンコン。ガガッ、ガガッ。
最近迄、こんな音が暫く続いていた。
…煩い。
世間一般的に、とうに人が活動する時間なのだから、工事の音がしたって当たり前。業者の人だって仕事なんだから。別に文句も言えないけど。

…私的にはもう少し眠りたい。だから静かに仕事して。静かに工事って…無理だけど。毎日そう思っていた。

私の朝は比較的遅い。…かなり遅いのかな。仕事が午後からだという事もある。だからゆっくりしている。
それは平日、毎日変わらない。
遅いなりに決まった時間に起き、マイペースにノロノロと仕度を始める。

お線香を立て手を合わせる、ベランダに出て水やり兼日光浴、ワイドショーを横目に朝食が終わればシャワーを浴びる。
思えば、湯舟にはいつから浸かっていないだろう。夜も簡単にシャワーだけだ…。
少々長くなった髪を、取り敢えず簡単に乾かし、纏める。

化粧が先だ。念入りな化粧ではない。通常なら10分、長くても15分もあれば充分仕上がる。
…ふぅ。今日もこんなものね。
着替えを済ませる。
そして中途半端な乾きの髪を丁寧にブローして、後ろで一つに纏める。前髪を斜めに流せば終了。あ、少しのワックスは使うけどね。

ここまで終わらせて、家を出る迄まだ1時間以上の余裕がある。
ソファーに座り、ニュースをチェックする。
大した事では無いようで、この時間、私にとっては気持ちを仕事に向ける為の大事な余裕の時間なのだ。
もの凄く気弱なんだと思う。ギリギリで仕度して出勤するという事が出来ない。だから仕度して、何もしないこの時間が私には必要不可欠。もの凄く大事。


はぁ。そろそろ行かなくちゃね…。時間って好きな時に止まればいいのに。そうなると、延々仕事に行かないつもりか…。
長く勤めていても、この瞬間の時間がなんとも怠くて気が重い。腰を上げた。
外回りに便利なショルダーバッグを斜め掛けにして、パソコンの入ったバッグを持った。

最後に玄関の鏡で顔をチェックしつつ、むりやり笑ってみる。…形状記憶。作り笑いも脳にはいいらしい。
これからは極力この顔で過ごさなきゃいけない時間。

「行ってきますね」

鏡の中の自分に挨拶をしてドアを開けた。
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