好きになるまで待ってなんていられない
「すみません、生憎と相席でしたら、お席をご用意できますが、いかがいたしましょう」
…なるほど。
日曜ですから?お一人様は少ないって訳ね。
私は構わないけど、相手の人は大丈夫かな。
「構いません、お願いします」
とにかく、休憩したい気持ちの方が勝った。
「どうぞこちらです。相席、お願いします」
「…どうぞ」
「失礼します」
…。
…。
げっ、…なんて事。これこそ、もう引き返せない。
席に座り、エコバッグを横に置いた。二つしか椅子の無いテーブル。
向き合ってしまった。
「…アイスコーヒーをお願いします」
「畏まりました」
…なんでよ。なんで居るのよ。
「…よう。奇遇だな」
…。
早く持って来て。アイスコーヒーなんだから早く作れるでしょ?
「あんたも水出し珈琲、飲みに来たんだ」
え?
「ここ、珈琲は時間掛けて水出ししてるんだ」
…え。よく見ずに入ってしまった。
こだわってるって事?
美味しいから、この男はここを選んで入ったって事?
「抽出するまで一日掛かりらしい。水出しだと、何でもまろやかでさっぱりしてるらしい。
俺も来たばっかりで、まだ来てない」
本当だ。まだお水しかない。
という事は、殆ど差が無く座ったのかも知れない。じゃあ、同じくらい待って同じくらいに飲み終わるって事?
…もう、なんて事…。キャンセルして出ようかな。
「荷物、多くて重そうだな」
あ。
「…まあ、休みだから、買い物しておきたい物、…一杯あるから」
…もう地獄。
別に特にこっちから喋らなくてもいいよね。"お連れ様"じゃないし?
赤の他人なんだから。