好きになるまで待ってなんていられない
壁伝いにずり落ちた。こんな…。やり逃げなんて…、一方的で酷くない?第一、どういうつもりなの?こんな…。
とにかく…。急いで買って来た物をしまった。勝手に反応して、腰なんか抜かしてる場合じゃない。情けない。
あいつ…、まだ隣に居るかしら。
深くは考えなかった。
後先考えずに部屋を飛び出した。
階段を駆け降りて駐車場を見た。
ある。黒い車。だったら居るはずよね。
ずんずん歩いて、正面のフェンスに手を掛けた。
開いてる。敷地内に入った。
日曜だから建物の正面玄関は開いてないはず。
砂利を踏み締め、裏口に回った。
ドンドン、ドンドン。ドアを叩いた。
「ちょっと!居るでしょ?ねえ!ちょっと!開けなさい。開けなさいよね!」
…。
「ちょ…」
カチャ。あ゛。
「煩い…ドアが壊れる。来ると思ったよ」
え?
「あんたは泣くくせに、気は強いからな」
手を掴まれ、引き入れられた。
「あ、ちょっと。何するの」
「続き、したくなったのか?だから来たのか…。意外に積極的なんだな」
腕の中に囲われていた。
「はぁあ?な、何言ってるの…ち、違う、違うから。とにかく…離して…」
腕を解こうとしたが無理だった。
「だったら何。何しに来たの」
…。
「どうして、…したの…」
「…言わなかったっけ?金曜に出来なかったからって、言ったけど?」
「…だから、それは、どうして」
…。
「…さあ、どうしてだろう」
少し緩くなった。手を引き抜いて右手を振り上げた。
「…おっと。ほらね?あんた言った通り、気、強いだろ?」
簡単に腕を掴まれて頬を叩く事は阻止されてしまった。