好きになるまで待ってなんていられない
「勝手にしていいわけない。変な事、言うからでしょ?」
「自分の部屋じゃなくても、相手の部屋…。簡単に相手のテリトリーには入らない事だ。じゃないと、どんな目に遭うか解らない…」
あ…。
「それとも、やっぱり望んで来たのか…」
何…この言い草。そんな訳無い。またカッとなっていた。
力はそれ程入らない。気がつけば左手で男の頬を叩いていた。…え。
男は顔を逸らさなかった。
「……年上の女を…こんな風にからかわないで。いい加減に…、適当に遊びたいなら他をあたって。…馬鹿にしてるの?…人を選びなさいよね」
どう見ても…、見た目からして私の方が年上に決まってる…。
こんな風に遊ばれるなんて…、そんな年齢はとうに過ぎている。
気がつけば、両腕を手首の辺りで強く掴まれていた。
引き寄せるようにして唇を奪われた。
ぶつかるようにして触れると、舌が侵入してきた。ん゛。仕返し?…嫌……こんな風にされるのは、…嫌。涙が滲んだ。ん゙んぐ…、ガリ。
「痛っ」
はぁ。思いっ切り噛んでいた。
…。
それでもまだ腕は掴まれていた。
「…嫌、離して…謝らないから。…からかった罰だと思って。大っ嫌い!二度と顔も見たくない!」
涙目で手を振り解いて逃げた。
…。
もう…、そうだった…まただ。
出たところで…、また、あっちに回らないといけないんだった。
はぁ。歩いた…。追い掛けては来ないだろう。
…馬鹿。最低。
口の中、…血の味がする…、あいつの血だ。
なり行きとは言え…傷付けてしまった。…だって、あっちが悪い。こんなのは…嫌。
あいつ、明日仕事なのに…。…そんなに切れてないよね…。
解ってる…。解ってる。
自分の事は誰より解ってる。…苦しくて悔しいのは何故か、とっくに解ってる。
でも…。こんなの…解らないじゃない。
はぁ、もう…嫌だ。何度、泣けばいいのよ。