好きになるまで待ってなんていられない
帰って洗面台で顔を見た。
…泣いたってこの程度。
きっと前も大して崩れてもなかっただろう。
…はぁ。水を含んだ。クチュクチュと口の中に行き渡らせ吐き出した。
薄い赤色の水が流れて行く。勢いよく水を出し、流す。もう一度濯いだ。もう殆ど色は無い。
もう一度、更にもう一度濯いだ。
はぁ。私の中のあいつの痕跡はこれで無くなった。
ベッドに突っ伏した。
…ん、ん…夜?…え?朝?何時?え、今日何日?
慌てて時計を見た。はぁ、まだ日曜か。…良かった。
あれから寝ちゃったんだ。
カラカラとサッシを開け放った。網戸にした。
はぁ。
ベッドに腰掛けた。
顔を両手で覆い撫でた。また覆った。
ふぅ。
…こんなに情緒不安定で。大丈夫だろうか。
考えても考えられない。…考えてるふり。
思考はずっと止まっている。
はぁ、また晩御飯…。空いてるはずだけど、それすらよく解らない。
…もう沢山食べなきゃいけない年齢でもない。
ピンポン。
っ。…びっくりした…はぁ……誰?
悪いけど出ないです。うちを訪ねて来る人は居ない。
幸い部屋の明かりもまだ点けていない。
暗いし…静かにしていれば居なくなるだろう。
コンコン。コンコン。
ん?遠慮気味なノックの音。
誰?…しつこい。
そっとドアに近付いてみた。
コンコン。
わっ、心臓が跳ねた。ドクドクする。このタイミングでのノック…びっくりした…。声が出そうになった。
ドアの向こう、人の気配が確かにしてる。
…怖い。覗くと目が合いそうで怖い。
「俺だ、居るんだろ?」
わっ。