好きになるまで待ってなんていられない


「痛っ…」

…。

「あ、…ごめんなさい」

まさか、直ぐ会うなんて思わなかった。謝るつもりなんてなかったけど、こんな風に一緒にご飯を食べるなら、謝らない訳にはいかなくなった。

「痛いですか?…食べられないですか?」

「…ああ」

…。

ベビーフードでも買って来ようか…。薄味だし、染みないかも。そんなもん食うかって怒られそうだけど。ゼリー状の飲料とか…。美味しいかどうかは知らないけど、栄養は取れるかも。

「あの、何か柔らかくて傷に染みないもの、買って来ましょうか?」

煮物だって柔らかくても、お醤油が染みるから痛いだろう。

「…あの、傷は酷いですか?」

あんな時、加減なんてしないから、本当、思いっ切り噛んでしまった。

「…見てみるか?」

男が舌を出す。
近付いて見てみた。

…よく解らない。

ひょっとして裏側にあるのだろうか。思わず摘んでしまった。

「#※≠×!…!!」

「あーっ、ごめんなさい」

摘んで裏返そうとした。

「つう……全く。あんたって人は…予測不可能な事をする」

「…ごめんなさい…よく解らなくて、裏かなっと思ったら、つい…。でも、確かに私の口の中、貴方の血の味がしたから、切れているのは確かで…」

ん゙!?。…ぁ、…ん。
後頭部を掴まれ、唇を割っていきなり深く口づけられた。

「…も゛う」

「…痛ぁ…。わざとそんな事言ってるのか…。はぁ。じゃなきゃ今のはなんだ…」

痛いって言ってたくせに、…ご飯も食べられないくせに。
どうしてこんな…無理してまで痛い事するの…。

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