好きになるまで待ってなんていられない
悔しーい!うっかりしていた。先に気がつくべきだった。
これではあいつの言う通り、この家から出ても、帰って部屋に入る事が出来ないじゃない。
……もう!…。
「鍵…、返して」
「嫌だね」
「返して。…お願い」
「…返して欲しかったら、そっちが取りに来い」
…。はぁ。…本当に、…もう。
このまま玄関に居続けたって、どうする事も出来ない。…こうして言い合っていても埒が明かない。
…迂闊だった。はぁ…、鍵。
渋々階段を上がった。
「取りに来たわ。鍵、返して」
「駄目だ」
「え、こうして…取りに戻ってるじゃない」
「それでも駄目だ。まだしてない」
…鍵が欲しかったら、…しろって?。
「…フ。あんたさ、何を期待したか知らないけど、とんだ勘違いしてる」
「…え?」
勘違い?
「フ。俺は、あんたに、整体、…骨盤の歪みを治してやろうとしただけだ」
「え」
「それを…。何だか知らないけど?あんたの間違った思い込みで、感情のまま、俺は頬っぺたまで叩かれたんですけど?」
「え、でも…」
だって…そんなの。変に意味ありげにそっちが言うからよ。
「言った通りの事だ。いきなりするより、身体がリラックスしてる方がやり易いからだ」
「…だったら。先に、整体するからお風呂に入ってって、はっきり誤解の無いように言ってくれたらいいでしょ?」
思わせぶりな言い方をするからよ…。だから結果、叩いちゃったんじゃないの…。
「風呂入れって言った段階から、勘違いしたのはあんただろ?」
だって、男の人の部屋でお風呂よ?…あんな雰囲気の流れからお風呂なんて言うから、…そうなるんじゃないかと思うじゃない。
「痛いな〜、本当…」
頬を摩っている。チラチラと見てくる。
……も゙ー。…はぁ。
「…ごめんなさい。とにかく、帰るから、鍵返して」
確かポケットに入れてたと思うけど。
手を男のパンツのポケットに入れてゴソゴソ探した。
「おわっ!?なんだ。いきなり何する」
「か、ぎ、入れてるでしょ?」
あ〜、こっちじゃない。だったらこっち。
「馬鹿、止めろ。ぐっ、…止めろ」
腕を掴まれた。
…何よ。
「ふぅ……もう。止めろって言ってるだろ?あんたって人は…はぁ…馬鹿か、本当そそっかしいな。ここにはあんたの鍵は入って無い。
…とっくに出してる。テーブルの上だ。…はぁ。さっき見せてたのは整体院の鍵だ。あんたは、視力、弱いからな」
あ、…。
「どっちにしても、こうなったら、整体より責任取って貰うぞ」
え?ちょ、ちょっと?
また手を引かれ部屋に戻された。