好きになるまで待ってなんていられない


「え、ちょっと、何、ちょっと、下ろしてー!」

聞き捨てならない…。

「解った」

「えーっ」

男はベッドまで来て私を下ろすと戻って行った。
え、何?帰るの?

あ、…違う。

形だけの小さな仏壇。膝をつき、お線香を立てて手を合わせている。

……何を言ってるの?


「…よし。お、あんたも、手、合わせるのか?」

「いや、私は、朝してるから…」

て、そんな事じゃなくて。うちの仏様に何を…勝手に…。

「許可を貰った」

…許可?

「え?許可?何の?貰ったって、そ、そんなの、貴方の心次第でしょ?」

「いや、どうぞって言われた」

……そんな虫のいい話。ある訳無いでしょ…。なにが、どうぞ、よ。
騙されないから。

「どうぞなんて…そんな事言わない」

「俺には聞こえた」

…。

「…そんなの、貴方の都合のいい解釈」

「そんなの解ってる。挨拶をしただけだ」

また、抱き上げられた。

「俺の家から…言いたい事は、色々とあるんだが、後だ。サッシは?閉めてあるのか?開いてるとあんたが恥ずかしいぞ?」

「閉まってます、…確か」

「フ。まあ、いいさ」

「いや、ちょっと、ちょっと待ってください」

ベッドに下ろされたから、壁の方へズリズリと下がった。

「何が…」

「何がって。いや、あの、あ、そうだ、そうよ。まだお風呂にも入ってないし」

「別にいい…」

脚を掴まれた。
ズリーッと引っ張られた。
うっわー、何て事するの。随分、荒っぽい。…やっぱりそっち?

「い、嫌…」

「フ。マッサージ、するんだけど?」

「嫌……え?なんて?」

ん?んん、…ん?一瞬でくちびるが重なっていた。

「…ん。隙…あり、だ。往生際が悪い。マッサージって言っても違う。違うマッサージだ…。
ふざけるのも誤魔化すのも終わりだ。うちでは…親が居るから…遠慮無く出来ないだろ…。集中出来ない。だから…こっちに来た…」

…ん。そんな事言われても。言われてもー。やっぱり…そっち?
< 53 / 150 >

この作品をシェア

pagetop