好きになるまで待ってなんていられない
「え、ちょっと、何、ちょっと、下ろしてー!」
聞き捨てならない…。
「解った」
「えーっ」
男はベッドまで来て私を下ろすと戻って行った。
え、何?帰るの?
あ、…違う。
形だけの小さな仏壇。膝をつき、お線香を立てて手を合わせている。
……何を言ってるの?
「…よし。お、あんたも、手、合わせるのか?」
「いや、私は、朝してるから…」
て、そんな事じゃなくて。うちの仏様に何を…勝手に…。
「許可を貰った」
…許可?
「え?許可?何の?貰ったって、そ、そんなの、貴方の心次第でしょ?」
「いや、どうぞって言われた」
……そんな虫のいい話。ある訳無いでしょ…。なにが、どうぞ、よ。
騙されないから。
「どうぞなんて…そんな事言わない」
「俺には聞こえた」
…。
「…そんなの、貴方の都合のいい解釈」
「そんなの解ってる。挨拶をしただけだ」
また、抱き上げられた。
「俺の家から…言いたい事は、色々とあるんだが、後だ。サッシは?閉めてあるのか?開いてるとあんたが恥ずかしいぞ?」
「閉まってます、…確か」
「フ。まあ、いいさ」
「いや、ちょっと、ちょっと待ってください」
ベッドに下ろされたから、壁の方へズリズリと下がった。
「何が…」
「何がって。いや、あの、あ、そうだ、そうよ。まだお風呂にも入ってないし」
「別にいい…」
脚を掴まれた。
ズリーッと引っ張られた。
うっわー、何て事するの。随分、荒っぽい。…やっぱりそっち?
「い、嫌…」
「フ。マッサージ、するんだけど?」
「嫌……え?なんて?」
ん?んん、…ん?一瞬でくちびるが重なっていた。
「…ん。隙…あり、だ。往生際が悪い。マッサージって言っても違う。違うマッサージだ…。
ふざけるのも誤魔化すのも終わりだ。うちでは…親が居るから…遠慮無く出来ないだろ…。集中出来ない。だから…こっちに来た…」
…ん。そんな事言われても。言われてもー。やっぱり…そっち?