好きになるまで待ってなんていられない


「指輪をくれた事、思い出した…」

確か、そう。お年玉を貯めてあったお金で買った、って。
子供だから価値なんてよく解らなかったけど、レースみたいに繊細なデザインの可愛い指輪だった。そう。指輪…。
正直に、高かったんだぞ、って言って。
やるって言って、ぶっきら棒に手を掴んで嵌めてくれた。凄く背伸びしてたな、お互いに。

だから…、好きなのに、好きになればなる程、バランスが悪くなったのよね…。
だから終わってしまった…。私は好きだったのに…いつも上手く伝えられなかった。

「…今、随分、意識飛ばしてただろ」

「あ、…うん」

元気にしてるのかな。…結婚、もうしてるかな。してるといいな…。幸せだといいな。

「おい、もう、いいか。…もう戻って来い。ずっとそんな顔して…、妬ける」

ぁ、…んん、…ん。

「ん、…く、苦しい…ん」

…んん。相当、妬いてるって事なんだろうか。…それとも、これは、ただの欲求、別物?
今は煙草の味はしない…。


「…私ね、凄い冷めた子だったの。全部が育った環境だって決め付けてはいけないんだろうけど、やっぱり影響はあったと思う。大人ぶってるって事が子供なんだけどね。結局、強情っぱりの我が儘なのかな」

「強情は強情かもな…」

顔をがっちりと挟まれた。ん、ん…。ん゙ー。

「ん、俺、舌噛まれたのなんて初めてだ」

「んん……強引だからでしょ?」

「大丈夫だと思ったんだけどな」

ん、ん。

「ん…、ぁ、もう…駄目」

…はぁ、…身体がどこも敏感過ぎて…もたない。

「明日、…休めない。明日は、仕事に行かないと。…だから…もう…」

「…解ってる」

…ぁ、や、もう…解ってなーい。
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