好きになるまで待ってなんていられない
はぁ、はぁ。ドアノブに手を掛けた。待って。ここ開けたら居ないなんて…そんなの無いよね。
バッと開けて足元を見た。
靴、ある。
「キャ」
「どうだ?イリュージョンだ、凄いだろ」
俯いていたところを正面から抱きしめられた。
……はぁぁ。腕を回した。
「もう…馬鹿。意地悪しないで…死んで会いに来たのかと思った」
「はぁあ?勝手に殺すな」
「だって、居ると思ったら居なくなってるし。会いたいと思っていたら居たし。
そしたら、煙草の匂いはするのに居ないし。車だって無いし。もう何が何だか…ぐちゃぐちゃ」
ぁんん、…ん…。
「会えなかったから、会いたくなって来た」
「あ…だけど車、無かった」
「車は駐車場のもっと奥。専用の駐車場に入れてある」
そんな枠があるなんて知らない…。
「…あ、…もう。馬鹿…会いたかった…」
凄く会いたかった。会ったから、余計恋しくなったじゃない。
「…凄く嬉しい」
「そうか?」
「なんでこんな時間に?」
「んー、帰って我慢してたけど、駄目だったから来た」
…。
「会いに来てー、って、呼ばれた気がしたから来た」
嘘。そんなに上手く気持ちが引き合うなんて難しい。
でも。
「…会いに来てって願ってた。…通じたのね」
だけど。これは必然のような気がする。
…好き。凄く好き。だから。
「…あのなぁ。一瞬の事だし、俺が居たからいいけど、こんな格好で出歩くなよ」
あ、また…ノーブラ、だった。…。抱き着いたから解ったんだ。
「…だって。そんな余裕なかったから」
「ま、いいさ。今夜は朝まで居る。ここから仕事に行くから。…寝るぞ。
あんたは自分の起きる時間に起きればいいから。鍵しろ。遅いから寝よう」
「…うん」
ベッドの布団に一緒に包まった。凄く顔が近い。もうずっと前からドキドキしている。
「身体に堪えるような事はしないから、キスだけさせてくれ」
「い、や」
「嫌ってなぁ…。恥ずかしい事、わざわざ口に出して頼んでるのに?」
「嫌。…キスだけなんて、…嫌。…抱きしめて」
実体じゃ無いモノの感触を消してしまいたい。