好きになるまで待ってなんていられない
「…成美は充たされているのか。…寂しく感じた事は無いのか」
こんな聞き方をされても…。色々、言葉の裏に隠されている意味がありそうで…。
完全な充たされた感があるかと言えば、まだ今は不完全で…不安定。何となく、充たされかけているけど、身体の繋がり以上の言葉は無い。
寂しいって、ずっと一人で居ると言う事にだろうか。…今の私はちょっと微妙に、なりかけているかも知れない。一人で居る人間は最初から一人だから、寂しくは思わない。そんなモノだと思う。誰かと居て、別れがあれば寂しいと実感するのだろう。
「普通です」
「フッ。…普通か。まあ、聞いた俺も何だけど。普通か…。そう言うよな。そうじゃなくても、寂しいかもなんて、今の俺に言ったらつけ込まれるもんな」
はぁ…もう話したくない…。
「少しは俺に興味を持ってみないか?聞きたい事があったら何でも聞いてくれ。見合いだと言っただろ」
あ…断りました。無い、です。
「黙れば黙る程、成美は自分から俺に寄って来てる」
「え?それはどういう事ですか?」
「フ。食いついたか。俺に好きになられるぞって事だ。物事をあれこれと興味本位だけで聞いてくる女とは違う。益々好きにさせてるって事だ」
貴方は本当に社長ですか?目の前の男を観察するかのように眺めた。決して軽口だとは思わないが、こうも簡単に好きという言葉を口にするなんて。本人に取っては簡単では無いのかも知れないけど。この人の性格を思えば、何でも無い…軽口のように見せようとしているのかも知れない。
現に箸はずっと止まったままだ。
…こんなに解り過ぎてしまうのも、どうかと思う。…興味なんて無いのに。
ただ長く近くで仕事をしているだけよ…。
…。
「飲み物入れて来ます。社長は、珈琲がいいですか?」
「俺も行くよ」
「え?」
「いつも自分でしてる」