好きになるまで待ってなんていられない


「お疲れ様です」

「お疲れ」

…最小限の言葉。


見た感じはいつもと一緒、変わらない。
変な感じのオーラも発していない。

男の人は離婚しても名字が変わらなくていいな…。
いつ結婚しても、離婚しても解らない。

女は相手の姓になると、色々と手続きが必要。
金融機関の物もだし、使ってた印鑑だって…。

女性は姓が変わる事がありますからと、名前だけの実印を作ったら、…当たり前だが、まだ何の不自由も無い。今のところ、煩わしい事務手続きもまだした事が無い。
こんな事を気にして用意周到だったから、結婚出来なかったのかも…。違うと思いたい。

…何か生じたら、社長に聞いてみようか、…なんて…聞くなら奥さんにか。……有りはしない。


「成美、ちょっと」

おっと。…何だろう。

「はい」


「今日、暇か?ご飯行かないか?」

…公開処刑でしょうか?

「ば、…暇ですが、行きません」

危うく、馬鹿ですか、と、また言いそうになった。言ってしまっても今日は熱に浮かされたと言い訳は出来ない。だけど、力一杯断った事に違いは無い。

もっと柔らかく遠回しにお断りしないと本当は駄目だろう。強過ぎる否定は、妙に親密なんじゃないかと…勘繰られるだろうか。
こんなやり取りが立て続けにあると怪しまれそうな気がする。
言葉遣いには気をつけよう。
で、目の前でニヤッとしたこの男は、この後なんて言うつもり何だろう。

「そうか」

…ゔ〜ん。無事、退社出来るだろうか。

逆に不安が沸いて来るんですけど。
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