好きになるまで待ってなんていられない
「成美」
「はい?」
「帰る計画なら止めておけ」
…暫く静かにしていたから、良からぬ考え事をしていたとバレてしまったかしら。
「…信用は無いかも知れないが、何もしないから泊まって帰れ。…うん。俺だから、信用はないな」
…逆に、何もしないって断言するなら帰っていいでしょ?何も…社長がしないんだから。そういう理屈もあるでしょ?
「部屋は取り敢えず沢山ある…。子供部屋だった部屋もあるし。何も、一つしかない部屋で一緒のベッドで泊まれって言ってる訳じゃない。
部屋は中から鍵だって掛けられる。だから大丈夫だろ?」
そうか、…そう言われたら、そうなんだ。って、その考え方で、…いいんだろうか。
「だから安心しろ。朝ご飯食べてから帰ったらいいさ。駅とか…バスとかタクシーだとか言うな。帰るなら明日俺が送るから、な?」
んん〜。なんだか微妙な空気を作ってしまったかな〜。
解っていたことだけど、変に知らない人じゃないって言うのが一番のネックなのよね。だからこそ駄目なんだ。
長く居る事は良くない。その気がないなら、戯れてはいけない。
…その気って…どんな気?…。
昔も戯れでは無かった。それとは違っていた。
真面目に冷めていようと努力して、していた。
もう…。泊まれば収拾がつくのかな…。ん゙ー、ん゙〜。
「…では、お言葉に甘えて。泊まって帰ります」
「そうか。じゃあ、慌てる事も無くなったな」
「ぇえ?」
「どうしても帰るって言われたら、送らないといけないからな」
「はあ?…え?」
何だかよく解らないんですけど。帰る帰るって駄々をこねたら良かったって事?
何だか、私から泊まるって言うように上手く誘導された気になる…。
「でも…じゃあ、帰るって言って…」
「今更送らない」
「…ですよね」
決めた事は覆ら無いって事か…。でも、…何だかな、…。
「客間があるからそこを使うといい。風呂も入るだろ?」
してやられた感が拭えない…。