苦手な言葉レンタルします!「辞めます!」編
そしていつものように誰にともなく、挨拶をして自分の席へ着いてすぐ、バッグからあの巾着を取り出して左手に握ってみた。
その瞬間、不思議なことにさっきまでの迷いが一気に吹っ飛んだ。
気が付いた時には、山田課長の前に立っていた。
山田課長はいつものようにスポーツ新聞をめくりながら、独り言をぶつくさと呟いていたが、沢木に気づいて顔を上げた。
「昨夜のサッカーはストレスたまったね~見たかい?」
「課長、私、今月で辞めさせていただきます!」
「沢木君?何を止めるんだい?禁煙宣言かな?」
沢木は山田課長のそんな言葉に、思わず「ハイ、禁煙します」なんて答えそうな気弱な自分を押しとどめ、さらに左手の巾着に力を込めた。
~~~4へつづく~~~