好きって言ったら、どうする?
そして
もう雨宿りの意味がないくらいに
濡れた体のまま、
その屋根のある場所へ 2人で駆け込む。
毛先から 水滴がポタポタとこぼれ落ちた。
「……すげェな、雨。」
「はい……本当に急でしたね…。」
ザァァァ…と大きく音を立てて
降っている豪雨の様子を見て
私たちはそんな会話を交わす。
…もう、花火大会はこれで中止だろう。
始まってまだ少ししか経っていなかったけど、この雨ならもう仕方ない。
(…願い事の途中だったのになぁ……。)
何だか、願掛けをしていた分
この天候で中止になってしまったという結果に
少し残念さが増した。
そんな風に感じて
私が視線を少し下げていると
それに気づいたのか、
勇さんが隣で
優しく私に向かって 小さく微笑んだ。
「……また来年も来りゃいいだろ。」
「…え?」
「また降ったら、その次も来りゃ良い。
俺で良ければ付き合ってやるから。」
───だから、落ち込むんじゃねェよ。
勇さんはそう告げると
濡れた髪を片手で搔き上げながら
その場にしゃがみ込む。
───そこで
濡れたお互いの手は離れてしまった。
でも
しゃがみ込んだ勇さんが
その場から私を見上げて
優しく口角を上げて
笑いかけてくれているから……
私は不思議と
寂しくは 無かった。