好きって言ったら、どうする?
─────そして
私の家の近くまでやってくると
要くんはようやく足を止める。
そしてその場に立ち止まると
要くんは私の方へ、黙って振り返った。
「…………。」
「………北澤…。」
「!」
小さく私の名前を呼ぶ要くんの声に
私はハッとして
意識をここへ呼び戻す。
そして顔を上げると
目の前には
少し眉を下げながら
何とも言えない表情を浮かべる
要くんの顔があった。
(っ、あ──────。)
そんな彼の表情を見て
私は
『夢』のように感じていた気持ちが
『現実』のものとして
自分に突き刺さる感覚を 実感する。
………ダメだ。
今 何か弱音を言ってしまったら
きっと─────我慢できなくなる。
「……ご、ごめんねっ。
何だかビックリして見入っちゃって…。」
「………。」
「あ…引っ張ってくれてありがとう!
おかげで勇さんにも
気づかれずに済ん──「北澤。」
───そんな風に
自分を保つために
要くんに強がった態度を取ると
不意に要くんが
私の名前を、静かに呼んだ。
私はそれに
小さくビクッ、と 肩を震わせる。
(………要、くん……。)
──────お願い、言わないで。
何も言わずに
このまま見逃してほしい。
…お願いだから
優しい言葉は、今──────
『かけないで欲しい』と、
そう思うのに
要くんにはそれも
分かっているようで
それでも
いや、だからこそ
私に向かって、口を開いた。
「……北澤。」
「………っ…。」
「俺の前では、無理しなくていいよ。」
──────まるで気持ちを
見透かしたように。