好きって言ったら、どうする?
(っ……愛理さん……!)
思わず声も出せずに
ただただ 驚きに目を開いていた。
何で、愛理さんと勇さんが……
「柑奈ちゃんの声やったんか、さっきの……。あ、飲み物は皆の分私が運んどいたで。」
「あぁ、悪いな金田。さんきゅ。」
「皆、進藤くん待っとったよ。」
そう思うと同時に
勇さんと愛理さんが話し始めて
2人の会話を聞き
私はそれで何となく、状況を把握する。
2人で来てたわけじゃなかったんだ…
(良かった……。)
私がそう安堵して小さく息を吐くと
愛理さんは再び私に視線を向けて、
心配そうに眉を寄せた。
「揉めてる声聞こえたけど…
大丈夫?何もされてへん?」
「あ…はい。
勇さんが来てくれたので、何とか…。」
「そか、なら良かったわ。」
私の答えに
小さく笑みを浮かべながらこちらを見る愛理さん。
私は複雑な気持ちで 苦笑いを返す。
……愛理さんは、勇さんが好きだから
勇さんに助けてもらった私のことを
どう思っているだろう。
……私が勇さんを好きってことに、気づいていたりするのかな。
そんなことを考えながら
愛理さんから視線をそらすと
勇さんが再び 私の方を向いて言った。
「悪い。そろそろ戻る。
……話の続きは、そん時聞くから。」
「あ……はい。わかりました。」
そう言われて
私が頷いてそう返すと
勇さんは優しく口角を上げながら
私に片手を上げ 背を向ける。
そして愛理さんと一緒に
自分たちの部屋へと 帰って行った。
私はその背中を見ながら
少しだけ…胸が切なくなる。
……私の話を聞いたら
勇さんは一体…どんな顔をするだろうか。
何て私に…言うんだろうか。
(……何にしても……受験前に勇さんに会うのは、その日が最後かな…。)
その次会った時には
もうどうなるか、決まってる。
私は少し苦しくなった胸を押さえながら
静かに…部屋に戻った。