好きって言ったら、どうする?
───ドクンッ
まるで、一瞬時が止まったような
もしくは私の心臓が止まったような
そんな感覚が、私を襲う。
そして直後に
彼の姿を 存在を
こうして目の前で認めてしまった私の胸は
今までの努力を裏切るように
大きく高鳴ってしまうのだ。
だけど
それに呼応するように
目の前にいる彼の目を真っ直ぐと
見れば見るほどに
現実を───突きつけられる。
『……前に見た。
お兄さんと女の人が、2人で歩いてるところ。』
そう言った、カナの言葉が───。
(名前を聞かなくたって、相手が誰なのかは分かってる。)
私は
目の前で驚き固まっている彼に
薄っすらと笑みを向けて 会釈をした。
まるで…今初めて、私と彼が出会ったかのように。
「……お久しぶりです。」
「……………何、で…ここに……。」
───何で、ここにいんだよ。
私の
形式ばった声色の改札を無視するように
本当に───本当にわずかに唇を震わせて
彼は私に そう言った。
…彼がそんな態度をするのだって仕方ない。
だって私は
彼に行き先も、別れの一言も言わずに
この町を 離れたのだから───。