好きって言ったら、どうする?










「……お前………何で何も言わずに、黙って行ったんだよ。」

「………。」

「せめて出て行く日くらい……教えてくれたってよかっただろ。」










怒っているのか、悲しんでいるのか───








どっちもと言えないような瞳で

私を見つめながら そう言ってくる勇さん。








私は薄い笑みを浮かべたまま目を伏せて

勇さんに向けていた視線を 静かに下げた。









「……ごめんなさい。言うタイミング逃しちゃって、言えませんでした。」

「………。」

「…久しぶりに会えて嬉しかったです。
じゃああの……用事があるので。」









そう言い


私は勇さんにお辞儀をして彼の横を通り過ぎる。









───今はとにかく、一刻も早く逃げたくて。









彼のそばから離れたくてしかなかった。








私はその場に勇さんを残して

そのまま自分の実家へと向かう。










(…神様……どうか、どうか……。)










私がいる間は




勇さんとあの人の姿を
私に見せないでください───。









私は歩きながら





そう願わずには…いられなかった。







< 342 / 428 >

この作品をシェア

pagetop